立ち往生

基本的にネタバレに配慮していないのでご注意ください。

OZMAFIA!!シーザー・スカーレット・オスカーワイルド・ロビンフッド感想

最初、あまりの場面転換の多さに理解が追いつかず、しかも暗転するのに場面も時間も全然変わっていなかったりして、暗転表示のたびに直視しなければならない自分の顔面反射(Vitaの画面ってほんとツルピカですよね)に地味にHPを削られた。

しかし何を隠そう、わたしは「主人公がいないところで交わされる、主人公をめぐる会話」が大好きなのである。主人公に言えず秘めている気持ちをこっそり激しくぶつけあいやがれと思っているのである。主人公の前ではスカしているくせに実は内心ぐずぐずで、主人公なしではちっとも生きていかれない男たちを眺めてニヤニヤしたいのである。なので、周回ごとにこのこっそり会話が地道に増えていくシステムは美味しかった。暗転がなんだ、もっとやれ。
 

●シーザー
予想に違わずただのワンコであった。ソウを相手にするなら絶対ソウ×シーザーだと思う。それぐらいワンコだった(本当にすいません)。シーザー本人よりも、どう見ても保護者なキリエにひたすら萌えるルートで、定期的に攫いに来るエンディングではキリエがただのお父さんと化していて笑った。

マフィアたち共通の敵というか、マフィアに馴染めないならず者たちが属するウォールフガングのリーダーなんだけど、別にならず者たちを束ねているわけでもなかったり、マフィアに馴染めないから街から出たくせに街でソウが稼ぐお金で暮らしていたり、「集団に馴染めないはみ出し者の孤高さ」がどうにもいまいち漂わないキャラだった。普段あれだけ街で暴れまわっておいて、祭りの時だけ加わるなんて、そりゃスカーレットじゃなくても咎めるわい。このルートのフーカちゃんは、ただ会いたい会いたいだけでクソ本当に(以下省略されました)
 

●スカーレット
はじめてハーメルンの素っぽさがチラリと垣間見えたルートで、自分へも他人へもギリギリと縛りのきついスカくんは非常に好みでした。どちらのエンディングも「マフィアとしての自分」と「個人としての自分」の折り合いを自分なりにつけた先にあるもので、すごく納得できたし、押せ押せなフーカちゃんに戸惑いながらも気づけば絡め取られてどうしようもなくなってるチェリーボーイっぷりが大変よろしかった。あれだけ迫っておきながら、スカーレットがコロッといったあたりでドンと突き放すなんて、フーカなんたる魔性。

カテゴリ的にはショタ枠なのかもしれないけれど、小さな体でどでかいライフル銃を構えるビジュアルと、自律心の強固さが相まって、攻略しながらどんどん好きになりました。ライフルをマジ構えしてるスチルが見たかったなあ。

グリムのボスになるエンディングでは、黒スーツ・黒ネクタイというマフィア正装に、思わずVita画面に頭突きをしそうになった。これだよ。マフィアったらこれですよ。しかも最初は敵対ファミリー同士だからきちんと敬語で、二人きりになったらお菓子と紅茶で引き止めつつ、言葉を崩す。なにこれ最強。

スチルのはにかんだ控えめな笑顔も大変よろしい。本人たちはバレてないと思ってるのに周りもみんなお見通しな上で黙ってるのが胸熱ポイントで、書類配達を任せたカラミアが、帰りがちょっと遅くなったフーカを見て微笑んで「何笑ってるんですか気持ち悪い」とかキリエに言われたりしていてほしいし、カラミアも「うるせえ。お前だってわかってるくせによ」とか返してほしい。とびきり美味しいやつを作ってほしい、とスカに頼まれてお菓子を焼いたヘンゼルが、誰に振る舞うお菓子なのかちゃんと分かってて、「誰に渡すんだよ言えよー!」とか騒ぎながらもあくまで知らないふりして作ったりしてたら尚美味しい。
 

●パシェ
友情EDにあまり興味がないのでなんとも…。人の恋路をカラミアとニヤニヤしながら見守るのは結構楽しかった。アクセルのDTっぷりも輝いていたルートでした。
 

●オスカーワイルド
このゲームがCERO Cでいいのか。オズマフィアをただの乙女ゲーから一線を画すゲームたらしめているのが、この娼館ルートであります。三者三様の愛し方とはこのことか、三人それぞれのエンディングを迎えられたらいいのにと思いつつも、三人がタッグを組んだ濃厚ルートに太刀打ちできる気がしない。
 
「真実を話そうとする人と、隠そうとする人、どちらがあの子にとって悪人なのか」というアルファーニの言葉がじわじわ染みてくる展開で、フーカを守りたい気持ちと接していたい欲の間でフラフラ揺れるマンボイの人間臭さがたまらなかった。フーカを抱いちゃった時の「白昼夢だと、思うことにいたします」という台詞がまたたまらん祭りで、心のどこかでどころか、しっかりはっきり「抱けて嬉しい」気持ちを自覚してるんですよね。なのに汚い自分から遠ざけたいと、いうなれば「善人ぶる」マンボイに、ドリアン・グレイは我慢ならんわけです。フーカを壊すことでマンボイも壊す、見下ろしてくるおっさんの目に震えがとまらない。フーカの初体験が3PってCEROレーティングはCho・EROってことなのかと(ドヤ顔)

結局マンボイが自分の欲を捨てきれずにフーカが壊れたところで終わらないのがオズマフィアの凄いところで、ここからプレイをキリエに見せつける(とんでもねえプレイですよこれは)エンドと、マンボイが滾るエンドに分かれます。どちらもおっさんの加齢臭ただよう濃密具合なのだけど、個人的にはやはりマンボイ滾るエンドを推したい。毒を食らわば皿まで、壊れたフーカを使ってドリアン・グレイを引きずり下ろすシーンのスチルにマンボイが描かれていないのが非常に悔やまれるのだけど、きっとものすごい凄惨で倒錯的な凄まじい顔をしていたに違いない。おっさんがフーカの足指なめるスチルより絶対エロい絵面だと信じて疑わない。

ヤった後にすぐ服を着るマンボイにも血反吐が止まらないよ。この描写を入れたシナリオ・ゆーます氏を天才という言葉ではとても表現できません。むしろフーカを抱く時は、マンボイは一切服を脱がないでほしいぐらいだ。自分の手で汚していくフーカを見下ろすマンボイの、憐憫と後悔と憤りでがんじがらめになった興奮。こうなってほしくなかったと思う気持ちと同じだけ、こうしたかったのです。愛は欲。これほど萌えるルートもなかなかない。
 
共に飛べないなら心中するまで。女主人となったフーカに身も心も尽くすマンボイを想像すると、うっかりこのゲームがレーティングCであることを忘れる。フーカが堕ちてしまったことを嘆き悲しみながらも、そんなフーカに寄り添える退廃的な喜びに絡め取られちゃってゾクゾクするんだろうな。そんなマンボイにこちらもゾクゾクする。ついでにそれを知った時のキリエの顔を思うとこちらもたまらんスマッシュ。キリエに「うちの新しい女主人です」とフーカを紹介する際のマンボイの声が、うれしそうで、からっと明るくて、「どこか壊れちゃってる」感が素晴らしかった。オズマフィアは声優さんの演技もすんばらしいです。

マンボイと幸せになる個別エンドが見たいなとも思うけれど、これはある意味「幸福の王子」で未来に向かわず死んだツバメ・マンボイとのエンドなわけで、これはこれでありだと感じる。共に春に向かう幸せがあるのなら、冬の寒さで共に死ぬ幸せもまたあるのだし、そのふたつを1つのゲーム内で描いてしまったオズマフィアは本当に凄まじいゲームだと思うのです。
 
 
ロビンフッド
既婚者を攻略する乙女ゲーってのは珍しくないのかい? 私は初体験でびっくらこいただよ。しかも奥様が植物人間で二度びっくらこいた。このルートのフーカがイケメンで余計びっくらこいた。

死者の思い出を生きている側が超えるのはどうあがいても無理なので、カラス先生の折り合いを待つより他になく、どちらのエンディングも腑に落ちるものではあった。奥さんの存在を胸にしまって生きていくカラス先生は、ぶっちゃけた話どちらのエンドでもフーカを愛してはいない。が、マフィアに属さず奥さんに少し似ているフーカを必要とはしている。生きていかねばならないからです。もちろんフーカの側もそれはよくよく分かっている。対象とヒロインがくっついてなんぼの乙女ゲームで、これほどの生々しさを見せつけられるとは思わなかった(これは褒め言葉ですよ)。
 
カラス先生が、銃を盗むために結婚指輪を外してフーカを抱く激アツ展開には拳を握った。事が終わったらさっさと指輪をはめるところもたまらん。それでこそ童話×マフィア×乙女アドベンチャーというものです。徹頭徹尾優しく紳士的なんだろうなあ。微笑みながら死んだ目で優しい先生に、どこかおかしいと感じながらも抱かれるフーカ。良心が家出中。ついでにCEROレーティングも家出中。
 
2人で穏やかに暮らすエンドでは、なんとなくカラス先生の心はほぼ死んだまま時間が過ぎていくのではないかと思った。世界の移り変わりに心動かされることもなく、ぼんやりしたままで、時折喪失感に苛まれることはあっても多分そんなに辛くはない。その分喜びを感じることもそんなになさそうだけど、それはそれで幸せなんだろう。

私は、先生がブチキレて牢に一度ぶちこまれ、フーカの待つ診療所に帰ってくるエンドの方が好きだ。こっちだと先生はまだ生きている気がする。すべてを飲み込んで診療所を守るフーカも男前だし、戻ってきた時のカラス先生の表情がちょっとグッとくる。情けなくて泣きたくて嬉しくて笑いたくて、なくしたものも得たものも心にあって、「ああ、この子、本当に待ってたんだな」って顔をしてるんですよね。仮面をつけて生きてきた先生がフーカに初めて見せた素の表情。この扉を開けるの、勇気要っただろうな。味わい深いスチルです。