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立ち往生

基本的にネタバレに配慮していないのでご注意ください。

遙かなる時空の中で6・ダリウスルート感想

遙かなる時空の中で6をゴリゴリ遊んでいる。いつものことだけど止め時がわからない。質の良い乙女ゲーというのはこういう作品のことを言うのか、と頭のてっぺんにVitaパッケージを叩きつけられた思いでいっぱいである。実はアンジェシリーズにも、トロワにちょこっと触れたぐらいであまり馴染みがないのだけれど、完全リメイクアンジェは買ってしまうだろうなと思った。パッケージの「遥か15周年」ロゴを見て、愛されてきたシリーズには愛されるだけの理由があるんだなと思い知らされた。2015年のゴールデンウィークは、ネオロマにどっぷり足を取られ、ひたすら神子の周囲の男どもを骨抜きにする幸せな作業で終わった。
 
●ダリウス
和助ボイスの「いけない神子だね」に脳天直撃されて初回突撃したものの、予想外にお笑いの人、いや、余裕あるぶった大人ほど実は余裕がない、の典型であった。神子を甘やかすうちにどんどん自分が足を取られていくさまは見ていて痛快だったし、苛立ちにまかせてシュークリームを口に詰め込まれた時にはどういう顔をするのが正解なのか、「シュークリーム つめ込まれた 対応」とかで検索したい気持ちでいっぱいだった。いきなりフルフェイスの仮面かぶるし、ルード君の空気読みフォローが褒めちぎりすぎで通販番組みたいだし、これだけのメインキャラにお笑い要素を容赦なくぶっこんでくるネオロマの恐ろしさに背筋がうずく。
 
ともあれ、ダリアの世話をする様子、軽い求婚、ネックレスの贈り物、そういった序盤の小さなエピソードひとつひとつが全てからみ合い、ひとつの取りこぼしもなくエンディングに向けて収束していく様子は本当に素晴らしくて、「質のよいゲーム」という言葉の意味を見せつけられる思いだった。軽くプロポーズするシーンなんて、プレイしている時はただの乙女ゲーにありがちな萌えシーンの一つでしかないのだけれど、結末に近づくにつれ、人間である梓にいけないと思いつつ惹かれていた本音やら、梓に怯えられた時の絶望感やらに彩られて、エンディングを迎えるためになくてはならない1シーンであったことに気づく。

前半のクライマックスである別れのシーンは、BGMの良さも相まって、ゲームの前後半を区切るに相応しい一大イベントだった。「感情を抑えている」ことが伝わる鈴村さんの喋りも良い。「君を手放すことも含めて、俺の運命だと思っている」というセリフがたまらなかった。どんな汚れをもかぶる覚悟と、梓の隣りで心やすらぐ日々は両立し得ない。別れを覚悟した人の、忘れないでくれ、行かないでくれと言えない代わりに出てくる言葉は、どのゲームでも心を揺さぶる。

一番近くにいた前半よりも、離れていた後半のほうがダリウスの心の動きがよく見えていたのも上手い作りだなあと思った。自分を恐れてほしくないのに、触れてほしいのに、わざと怖がらせるようなことをしてしまう。梓を上手に甘やかしていた当初とはえらい違いで、全然余裕がないお館様に対して、ダリウスの本心にどんどん近づいていく梓。2人が再び屋敷で心を通わせた時は思わずホロリとしてしまった。好きになったのが梓でよかったなあダリウス! そしてドレスまで縫えちゃう側近でよかったなあダリウス!!
 
一度ダリウスに不信を抱いた後も、自分の目でしっかりと物を見て判断しようとする梓ちゃんはとても素敵なヒロインだった。ダリウスのような「裏があります」と顔にデカデカと書いてあるようなキャラが、こういう真っ直ぐなヒロインに陥落してぐずぐずになっていく様子は本当に気持ちがいい。

でも実はこのルートで一番グッときたのは、森の入口でルードが民衆から石を投げられるシーンだった。今まで人間に対して冷めきった、諦めた態度を取り続けてきたルードが、初めて憤りを露わにする場面。ダリウスの苦悩も苦労も隣で見てきただけに、理解すらしてもらえないばかりか、ダリウスの命が尽きかけてなお道を通してすらもらえない怒りと悲しみが爆発する名シーンで、立花慎之介さんの演技に心が震えた。ゲーム内1、2を争う名演技だと思う。

エンディングは、ルードがいないとダリウスの夕食はおむすびばかりになりそうだなとか、ルードは梓のドレスを作るにあたっていつ採寸したのか吐けやコラァ(by 虎)とか、そんなことばかりが気になり、結婚式に全く集中できなかったが、2人が幸せになれてとてもよかった。