立ち往生

基本的にネタバレに配慮していないのでご注意ください。

CLOCK ZERO~終焉の一秒~Extime・理一郎ルート感想

鷹斗が二周目攻略制限あり、とのことだったので、まずは理一郎に突撃してみた。オトメイトだからそうなんだろうなとは思ったけど、今のところ、タイムトラベルものが孕むパラドックス的な部分は半目で見よ、という潔さが清々しいストーリーが繰り広げられている。ミニゲームの隠そうともしない作業感にも苦笑した。ときめきと萌えが一番大事さ。だって乙女ゲーだもの。
 
切なくて泣ける、という触れ込みに期待してプレイを進めているが、果たして胸を鷲掴みにするような切なさは訪れるのか。君のいない世界なんていらない系キングさんの動向に期待が高まりますが、どうにも浪川さんボイスで某カラスの精霊(手が早い)を想像してしまっていけない。
 

理一郎

10年、しかも12歳からの10年の長さは、体感的にはどれくらいなんだろう。12歳から時間をすっ飛ばし、22歳で再会したふたりは、今まで生きてきたのとほぼ同じだけ(理一郎にとっては人生の半分)の時間を「共有していない」わけだ。
思いっきり過去の自分の前に現れちゃったりして、パラドックス的に薄目を開けて進めないとやってらんない展開が次から次に迫ってくるが、隣りにいるのは確かに理一郎なのに、自分が一緒にいた理一郎ではなく、理一郎が助けようとしているのもまた自分ではない、という肌感覚が凄まじくリアルだった。
もし自分が撫子でも、22歳の理一郎に「自分が知っている」理一郎の面影を見つけながらも、これは別人なのだと感じてしまうだろうと思ったし、近くにいるのに遠くに感じる淋しさが胸に迫るようだった。
 
こういう場合、面影を見つけてしまうことで悲しみが増すことがよくある。ふたりで手を繋いで廃墟を歩いたり、抱き合ったりするシーンは、幼なじみ的な甘酸っぱさよりも、圧倒的な重ならなさから必死に目を逸らしている感じがすごくて、ただただ切なかった。撫子のほうはその違いに割と早く気付き、きちんと受け入れたのに対して、理一郎の方は最後の方まで理解できなかったのもリアルだった。
理一郎の方は12歳の頃から自分の気持ちに自覚的で、プレイヤー側はそれを知っているだけに、このすれ違いはたまらない。誰より近くにいただけに、見えるはずのものが見えなくて、許容できるはずのものが許容できなくなるんだよね。
 
現代に戻って撫子が理一郎に「ずっと一緒にいよう」と告げるけれど、彼女は記憶をなくしているはず(ですよね?)なのになんで覚えてるっぽいのかとか、1年後に事故死するのはどうなった?とか、いろいろ疑問が尽きず、あっさり10年経ってのプロポーズに感動も何もなく、死んだ魚のような目で2人を見守るマンと化した。
 
展開は唐突そのものですが、箱庭EDのほうが切ない感あって好みだし、腑に落ちる具合で行くと、過去の撫子を助けようとして理一郎が代わりに死んでしまうEDが一番だと思う。やっぱりこのストーリー展開で行くと、撫子の死が決まった時点で、何も失わず2人で幸せに生きられる未来は消えてしまうのが自然でしょう。
何かを得るなら何かを失う必要があり、その意味では、理一郎の大切さに気づいた撫子がちゃんと10年後に理一郎と幸せになる、なんてのはパラレルEDだと思う。
 
まあ何はともあれ、幼なじみというのは美味しいですね。成長すると、互いの男らしさ・女らしさに動揺してしまうのも美味しいし、なんだかんだ自分は撫子には弱い、と理一郎が自覚しているのが、甘酸っぺえカップルだなと思う。パラレル世界ではマントなんて羽織らず幸せになってほしい。