プリンス・オブ・ストライド、藤原尊・小日向穂積
藤原尊
最初に言っちゃうけど「愛してる」じゃなくて良かった(トラウマ)。「お前が好きだ」で良かった。食生活がまともになるにつれ、人間らしくなっていったワンコ調教ルートだった(語弊)。普段は黒縁メガネで走るときはコンタクト、という設定もよくわかってる感じで大変よかった。
一番めんどくさいけど一番純粋なのが尊で、なんたって子どもの頃の約束を一人律儀に果たそうと来てみたら、他の2人は忘れているときたもんだ。関西から出てきて一人暮らしまで始めたのに。そして中学時代は颯田先輩に絡まれていたわけで、尊のあまりの不憫さに泣ける。
一人ひとりで走るのが速い人は他にもいるけど、みんなの想いをつないで走れるのは自分だけ、っていうのが尊っぽくてイイなあと思った。若くて未熟な高校生ならではの葛藤と衝突と、いちばん高校生っぽいのが尊なのかもしれない。
それにつけても「理由? そんなもの、自分で見つけろよ」とブラック怜治さんが降臨された時は動悸がやばかった。自ルートですら見せてもらえなかった黒さの片鱗がハンパじゃないです。
ストライクEDは、奈々ちゃんの抱き寄せ方とキスの仕方がそれぞれ違って面白い。久我さんが一番手馴れてるというか、男っぽい感じかな。気持ちを打ち明ける手前の「お前が、…」で切れるノーマルEDも十分に甘いし、エピローグの部員ワチャワチャ感が楽しくて好きだ。
小日向穂積
軽めのショタ枠だとばかり思って始めたけど、意外に一番心理的にじっとりくるというか、ドラマチックなルートだった。久我先輩絡みの衝突も、穂積を中心に見てみると、すごく丁寧に作られているのが分かる。
ヒースの苦労を間近で見ながら何もできなかった無力さに、歩にケガをさせ、チームに負けをつけてしまった罪悪感が重なって、久我先輩を突き放してしまう心の動きが巧みだった。
部のためには久我先輩を頼るべきだと穂積はちゃんと理解している。だから折り合いのつかない穂積が部を辞めるかもしれないと、歩も理解している。そんな2人と久我先輩を繋ぐのはストライドであり、試合であり、リレーショナーである奈々なのだ。
自分が笑うことで周りも嬉しいのだ、という簡単なことに気づいていない穂積はとても不器用で、誰よりも子どもだ。久我先輩にしっかりぶつかった後もバンちゃんへの劣等感に苛まれるし、家族や仲間からの愛情を受け取りきれていない。
いつも一緒にふざけている歩は、そのあたりのことを全部わかっているわけで、時折差し込まれる歩のセリフがボディーブローのように効いてくる。「幸せは自分で掴み取らなきゃ」と、あとは穂積が踏み出すだけなんだと、歩は最初からわかっている。
堂園に殴られそうになった奈々ちゃんに、何度もしつこく無事を確かめていたのが印象的だった。自分に自信がないあまりに周りのことも信じられない穂積。
そんな穂積が決勝でアンカーを務める、この流れへの持って行き方がすごく上手いというか、西星絡みのエピソードの巧みさに思わず声が出た。自分や相手を信じることを、アンカーという役割を通して気づくわけで、そのためにアンカーは穂積でなくてはならなかった。相手はバンちゃんでなければならなかった。
ひとりひとりをライバルとしてちゃんと当てて、かつチームとしてもバランスを取っている西星のキャラクター構成は本当に素晴らしいと思う。
それにしても歩役の下野紘さんなくしてこのゲームは成り立たないというか、この2人は別撮りしたとは思えないぐらい空気感がぴったりだ。歩の入院中は、部内の重苦しい空気が伝わってくるみたいでマジメに胃が痛かった。声優さんってすっげえなあ!