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立ち往生

基本的にネタバレに配慮していないのでご注意ください。

「Free!」1期クライマックスで伝えたかったものは何なのか

アニメ感想 Free!

Free!」1期・2期を続けて見た。
放送当初に大論争を巻き起こしたという1期の終わり方よりも、夜の海に入るなんて危険極まりないことを怜がやらかしたあたりで気が遠くなりかけたけど、2期の終わりまでしっかり見てよかったなと思った。ベースに流れるものが1期では過去、2期では未来なのだから、2期であそこまできちんと描くなら、1期のうちに凛を引っ張り戻す必要があった。そうでないと、2期で凛が引っ張る側に回れない。だから1期の終わり方は必然だったと私は感じる(1期と2期をぶっ続けで、全24話みたいな感覚で見たからそう感じるのだろうとは思う)。

●「Free!」1期クライマックスで伝えたかったものは何なのか
自分が心の奥底で本当はどうしたいと思っているのか、きちんと理解している人は、そんなに多くない。

1期のクライマックスで、凛と遙は自分たちの本心に気づくわけだけど、同時に「本心は叶わない」ことにも気づいてしまう。所属する学校も違うし、岩鳶のリレーメンバーは揃っていて凛の入る隙はない。ここで怜を外して凛を入れてしまうのが「ありえない」ってことなんだけど、確かに現実的にあり得ない。だけどアニメに限らず、創作物は、作り手の意思を伝えるために作られるものだ。京アニが、この1期クライマックスを通して「青春」を描きたかったのだとしたら、これ以上にない展開だったと私は思う。

なんでかというと、若者が「後先を考えずに無茶で無茶を通してしまう」感じがすごくよく描けているからだ。大人になると、先のことを考えるから無茶をがむしゃらに通そうとしなくなるし、無茶を通すとしても手段に頭を使うようになるし、有り体に言うと、諦めることが上手くなる。今こうすると、どうなるか? 他者のことまで視界が広がる。

だけど若者はそうじゃない。むちゃくちゃをするのは若者の特権だ。メドレーリレーのシーンの絵コンテには「真琴の背中に隠れて、視聴者から凛の姿は見えないけれど、メンバーたちは凛の姿を隠そうとはしていない」というような指示が書かれているそうだ。岩鳶の4人(あえて4人と言うよ)は、むちゃくちゃをやっている自覚はあるけれど、それを恥ずかしいとかバレたらまずいとかは微塵も思っていない。

大人になったら絶対にできない無茶を躊躇なくやってしまう、なぜなら「凛と(遙と)泳ぎたいから」。この直射日光みたいなまっすぐさや揺るがなさ、世界に自分たちしかいないみたいな自意識が、ああ、青春ドラマだなあと思う。こんなこと、この年代にしかできない。


なくしたものは、取り返すことができたり、永遠に取り返せなかったりするけれど、がむしゃらに自分の手でなくしたものを取り戻そうとする姿は、大人になると失われてしまう若さそのものだ。ひたすらに眩しい。


●じゃあこれでハッピーエンドだとでも言うのか
じゃあ無茶をやったもん勝ちで万々歳なのかというと、そんなわけはない。凛が出るということは怜が出られないということだ。怜だって出たくないわけがない。けれど、自分が泳ぐきっかけになった、遙のフリーな、自由で美しい泳ぎを取り戻すために、怜は身を引くことを選ぶ。

このシーンが珠玉というか、クライマックスにならないと自分たちの本心に気づかなかった遙たちと違い、怜は早くから遙と凛の本心に気づいている。本人が気づかない本音に、他者が先に気づく描写はすごくリアルだ。

そして、「For the team」でチームの結束が得られた代わりに、失われたものも確かにある。その喪失と獲得のバランスに、怜だけが自覚的だ。何かを得るためには何かを諦めないといけない。来年も水泳部としてリレーを泳ぐためには、今自分が身を引かなければならないことを、怜だけが分かっている。過去に囚われた他の4人と違い、怜だけが1期の時点で既に未来を見ているように見える。

●1期で「取り戻せる力強さ」を、2期で「二度と戻らない儚さ」を
つまり、2期のエンディングで5人がそれぞれの未来に向かって歩き出すためには、1期で過去にばかり向いていた幼なじみ4人の視線を、未来の方向へ転換させてやる必要があり、それが可能なのは、ただ一人過去に囚われていない怜だけだった。怜だけが4人を救うことができた。

青春時代独特の、自分たちのことしか見えない近視眼的な感じ方や、むちゃくちゃな突っ走り方、いわゆる「青臭さ」が持つ輝きと力強さ。一度失っても、取り戻せるものがあること。これが、「Free!」1期で作り手側が伝えたかったものなんじゃないだろうか。

取り戻せるものがあるということは、その逆もまた同じだけ存在する。1期でこれでもかというほど青春の力強さを描いた分だけ、二度と戻れない夏の儚さとゆらめきをしっかり描いた2期が、より繊細に鮮やかに胸に迫るのだと思う。