立ち往生

基本的にネタバレに配慮していないのでご注意ください。

「絶対階級学園」十矢・壱波感想&まとめ

七瀬十矢ルート

絶対階級学園

一番ストライクゾーンから外れている気がする、と思って始めたけどそんなことなくて、王道萌えパターンな石ころグッドEDではちゃんとキュンキュンした。壁やら床やらにドンドンすればいいってもんじゃないけど、「強いが故に、弱い人が間違える気持ちもわからないし許すことができない」という十矢の頑なさと、甘さとも受け取れるネリちゃんの許す態度がぶつかっていく展開は、どちらの立場も理解できる。石ころはハッピーで可愛くて平和。まるで乙女ゲーみたい!

それより何より薔薇ルートですよ。わたしは十矢の薔薇グッドEDは胸クソ悪くて最高に好きです。染まらないでほしい、という十矢の願いも虚しく、一瞬で薔薇階級に染まりあげて転がり落ちていくネリちゃん。ネリちゃんって純真無垢なんだなあ、そりゃ汚したくなるわ…とちょっと学園長に感情移入しかけたルートでもあった。煩悩をレジスタンス。

だって、ネリちゃんは十矢が嫌がるのを知っていて香水をつけていく、十矢はその思惑を知っていて突き放せず、香水の匂いを取り除くべく首筋を舐め取るだけって…。これがグッドEDってまじかよ…。

ネリちゃんも十矢も、当初のいいとこ皆無すぎる展開ですが、こいつら絶対ヤッてますよねなシーンがいくつもあったから納得がいく。頭で考えることなんて本能の前には無力です。この時間がいつまでも続かないとわかっていて、こんな頭からっぽな手段しか選べないネリちゃんも、高い志はどこへやらの十矢も、最初からの落差が激しすぎてやばい。おらワクワクしてきたぞ。

正直、ここまで「落ちた」姿も、学園長が見たかったネリちゃんの一面な気がして興奮した。ベッドの中で抱き合うスチルも美しくて、ネリちゃんが綺麗で可愛いから余計にクるものがある。2人で腐り落ちていくだけ、みたいな。わたしですか? もちろん学園長の気持ちで雑巾みたいな顔でプレイしてましたよ。ハハ。十矢と話したさに石ころをいじめ倒すEDも好きです。いや~これも愛なんだよ、だからこれは乙女ゲーだよ。楽しいな~!

真相バッドEDも負けず劣らずエグくてよかった。何もかも忘れて、学園長私室のソファで寝るのが好きな子になったネリちゃんは、当然学園長にあんなことやこんなことをされちゃったんだろうな…。想像の翼が羽ばたきますね! 18禁ゲームであればさぞかしアレな展開を見せてもらえたんだろうけど、18禁でないからこそ、仄かに香ってくるようなエロさと抜群のえぐみが混ざり合って、こういう素敵なゲームになっているんだとも思う。

 

加持壱波ルート

絶対階級学園

18番だから壱波くん。利己的な面を隠さないチャラついた部分がとても好きだったので、唐突にいい人になられても、なんか…その…光になりきった演技とかどういう顔で見たらいいのかよくわかりませんでした。でもネリちゃんは感動していたからそれでええ。ネリちゃんと話しているところを人に見られそうになったら突き飛ばしたりするのは、最高に小物でとてもよかったです。あと私服の謎カーディガンはどこで買ったんだ。

わたしはやっぱり薔薇グッドEDが好きですね~~。話のエグさもさることながら、これをグッドEDに設定してしまう作り手のファンキーさがたまらない。だってある意味「グッド」EDなんですよ、少なくともあのルートの2人にとっては。

このグッドEDのタイトルが「リヴァイアサン=国家」というのがふるっていて、要するにあの状態は、ネリちゃんと壱波の相互同意の上に成り立ってるってことなんですよね。相互契約の元に、2人だけの国家が形作られている。互いの本心なんて不要なのに、不要だからこそ、この狂気は続いていく。どちらかが舞台から下りれば世界は一瞬で終わるのです。壱波に寄り添うネリちゃんはとても可愛い。背筋が凍る。

壱波のEDはタイトルが洒落ているものが多くて、「ニルヴァーナ=消滅」なんかも好きです。確かに、死んでしまえばあれこれの悩みからも解放されますからね。極上の笑顔で「次のお茶会までに死んでね」とナイフを差し出す摩耶子さんが揺るぎない。

あとはハムレットの一節が付けられているEDでいえば、真相バッドEDの「To me it is a prison」もぴったりのタイトルだなと思います。「生きたいか。わたしには死にたいと言っているように聞こえるがね」という学園長の台詞も、作中にも登場した「To be, or not to be」にかかっていて上手いなあと感じました。バッドEDで大体みんな精神か体のどっちか、もしくは両方がイッちゃってるゲームって冷静に考えたらすごいですよね。

 

まとめ

絶対階級学園

「父親を殺して母親を奪った」叔父に復讐する悲劇、ということで、大筋そのものがハムレットをモチーフにしていたり、キャラルートでハムレットのエピソードが組み込まれていたりして、まさにシェークスピアの人間悲劇っぽい雰囲気を作っていたのはびっくりした。登場キャラほぼすべて「人生を演じていた」わけだしね。ネリちゃん以外の生徒は全員名前に数字が入っている理由も、蓋を開ければ納得でした。

でもいざ学園の外に出てみれば、ネリちゃんにはお金持ちの祖父がいて、働く必要もなく大学に悠々通って彼氏とラブラブ、って正直なんだかなあという気持ちにはなった。摩耶子さんとか一体どうなったんだよう。

 

エド先生はみきしんボイスのために、絶対何か裏があるのだと信じて疑っていなかったから、最後までいい人で申し訳ない気持ちになった。母親のために保身に走る気持ちはよく理解できるし、陸ルートで「鷹峰財閥の力があれば」と主張する陸に対して憐れむみたいに笑うシーンは切なかった。

学園長はサイコパスの自覚あるんか~いって感じでしたが、正統派に気持ち悪くてよかったですね。後から振り返ると、ドレスを用意してるシーンとかなんでサイズ知ってるんだよってジワジワ怖い。何度も言うけど、これが18禁だったらネリちゃんまじでやばいことしかされてないですからね。ついててよかったCERO D(17才以上)。おかげでこの立ち上ってくるような気味の悪いエロさ(褒め言葉)を味わうことができたわけです。

マリアに殺されそうになってキョドった時、一気に小者感が出ちゃってウ~ンと思ったんですが、倒れる前に「そんな顔もできるんだな」みたいなことを言ったのが好きだなと思った。こんな変態に好かれちゃったアリカママはどうすればよかったんだろう。「来ないでケダモノ!」とか激高してもそれで興奮されてるし…マリアは学園長のどこがそんなに好きだったんや…。

スチルはどれもとっても綺麗だった。構図も色使いも素敵。早送りも早いし、選択肢までスキップしても未読があれば止めてくれたりで、操作性も本当に快適だった。テキストも読みやすかったです。

 

改めて思い返すと、一番衝撃的だったのは、薔薇に上がって萌花がいきなり恭しくなるシーンかもしれない。ネリちゃんに取り入って利用してやろうという悪意が全くないだけに、毎回肺がじわじわ汚染されるような気持ち悪さがあった。

薔薇ルートは特に、優雅さでコーティングされた悪意の匂い、嘘をついたり見栄を張ったりっていう人間的などうしようもなさ、環境に染まっていくネリちゃんの足場の脆さみたいなのが、こっちの神経を容赦なく削っていく展開が多いので、ラブラブハッピーなもの以外は苦手です、という人には辛いかもしれない。でも、割とバッドED嫌いじゃないです、という方にはぜひ遊んでもらいたいゲームです。しんどさの向こうにある愛の形を感じられたような気がします。石ころルートの青春グラフィティもよかったよ!