立ち往生

基本的にネタバレに配慮していないのでご注意ください。

ヒロ様の愛し方とべるの覚悟について~プリティーリズム・レインボーライブ感想

プリティーリズム・レインボーライブ」のクライマックス「オーバー・ザ・レインボーセッション」の最中に、ヒロ様とべる様が見せた言動について、いくつか思ったところを書いておきたい。話数で言うと46話あたりです。

 

「君を守る」と言わないヒロ様

オーバー・ザ・レインボーセッション」に入ると、一人ひとりがこれまで抱いてきた葛藤と歩んだ道のり、成長を次から次に見せつけてくるので、箱ティッシュが手放せないタイムになる。あの涙は全部この瞬間の煌めきに、そして未来へと繋がっているんだなと思う。プリリズは未来へ続く物語だ。

 

この涙腺崩壊タイムにおいて、べる様はヒロ様に対して初めて弱音を吐く。取り繕って追い返した昔を思うと、目を見張るような成長だ。ヒロ様は、君ならできると僕はずっと前から信じていたよと告げる。そして「べるの夢が見てみたい」「君にはもう僕の助けは要らないね」(要約)と言う。

私はここが本当に、本当にすごいと思う。「いざとなったら僕が君を守るから、安心して」とは言わないのである。

 

深い愛情と孤高さ

少女漫画では、男の子は困っているヒロインにさっと手を差し伸べる。「僕が君を守る」「君は何も心配しなくていい」なんて言う。耳障りがよくて甘くて優しい言葉だ。でもヒロ様はそんなことは一言も言わない。べる様が自分の力で飛べること、自分の夢を叶える力を持っていることを、誰よりも信じている*1

 

プリズムライブができずに苦しんでいたべる様に、わかなとおとはが声をかけようとした時、「今声をかけられたくないと思う」とヒロ様が止めるシーンがあった。ヒロ様は「孤高の存在」であることの尊さと厳しさを誰よりも知っている。だからこそ、同じ高みにいるべる様のことが、まるで自分の半身のようによく理解できるんじゃないだろうか。

頂点に立つ者は誰よりも孤独だ。仲間の大切さがわかるからこそ、立つべき時はたったひとりで立たなくてはいけない。夢は自分の手でしか叶えられないとヒロ様はわかっているし、べる様がそれを知っていることもわかっている。この場面で「君を守るよ」と声をかけることは、きっと侮辱に等しい。女の子向けのアニメで、大切な女の子の迷いに対して、安易に「僕が守ってあげる」なんて言わず「君の夢が見てみたい」、つまり「ひとりで歩いて行け」と返したヒロ様は、男の中の男だと思う*2

 

進み続ける覚悟

そしてべる様は7連続ジャンプを飛ぶ。ライブの中で「どんなに笑われても、つらくても、夢を叶える姿を見せ続ける」覚悟を決める。勝ったら終わり、にできたらどんなに楽だろう。でもべる様は安住の地に留まらないのである。怖くてもつらくても一人で進み続けるのである。なんという誇り高さ。

7連続の最後に飛んだジャンプは「宣誓 永久のワルキューレハート」で、ワルキューレは戦場に生きる女神の名前だ。永久に戦いの場に生きることを、べる様は宣言したのである。あまりに凛と切なくて、涙がでるほど美しい。プリリズは全国の小学校で必修化すべきだと思います。

 

世界を自分で変えていく力

プリティーリズム・レインボーライブを通して私が強く感じたのは、「世界を変えていくのは自分なのだ」という力強いメッセージだ。

最終クールのオープニング曲「Butterfly Effect」の歌詞にもそれが色濃く出ていると思う。人は他人を変えることができない。子どもは大人の枠組みの中で、なんとか矜持を保って生きていくしかない(引っ越しが決まったわかなを引き止めなかったべるが、わかなの最後のライブを「目に焼き付けておくのよ」と涙ながらに見つめるシーンは、何度見返しても涙腺がとんでもないことになる)。

けれど、なるちゃんがべるを、べるがなるちゃんを変えたように、誰かの行動で誰かが少しずつ変わっていく。変えることができるのは自分の行動だけでも、それが世界を変えるのだ。まさに「君がひとつ羽ばたく そのたびどこかで 風が吹いて未来を動かす力になる」そのもの。

 

思い通りにならないこの世界の中で、どうやって生きていくかという話について、レインボーライブを見ながら何度も思い浮かべたブログ記事がある。

yaplog.jp

声楽家の高田正人さんが、浅田真央選手について書いた記事。フィギュアの採点が不公平だと言われることについてこう言及されている。

100歩譲ってそのような不正が少しあったとしよう。でもさ、そもそも世界というのは不公平なものなんじゃないのか。

(中略)

「世界というのは『平等に不平等なもの』なのである」

(中略)

不平等なこの世の中でどう生きるか。

その不平等な世界の中でどう咲くのか。

 

次を向く事、明日を見る事、不正があるのならその世の中でどうやったら力を出せるのかを考える事。文句の前に動くこと、努力を続けること。

それができる人だけが残っていくのだと思う。あのオリンピックの氷上にいる人たちはそういう人たちだと思う。

それは良い人とか悪い人とかではなく、生きて行く力の問題だと思う。

(中略)

人の事を言っていても自分の事を言っていても同じ。

その場所で生きて行こうと決めたなら文句を言う間に進むこと。

世界を輝かせるのは自分なのだという事。

 

仲間ができた、成長できた、夢が見つかった、そこでドラマを終えることもできるのに、留まらない時間の中で、きちんとひとりで歩き出していくところまで描き切ったプリティーリズム・レインボーライブ。何度素晴らしいと言っても足りない。

 

Blu-ray BOXの発売も決まっているよ*3

NEWS|プリティーリズム CD・DVD公式WEBサイト

これを必修科目にすれば、DVに悩む女の子とか減りそうだけどどうかな

*1:45話で「男の子は一度くらい、閉じ込められたプリンセスを助ける王子様になってみたいと思ってるんだ」と茶化している分、このやりとりの重みが半端じゃない

*2:このヒロ様のジャンプが、みんなを愛する故に一人を抱きしめられない孤独な「無限ハグ」だと思うと、もう、もう(以下略)

*3:「本編26話:約650分、25話:約500分」表示がクール